オイル漬け
スケジュール帳に書き込まれた数々の演奏会の予定に大きなバツがついて、誰かと一緒に演奏したり、お客様に聴いて頂くことの出来ない日々が続いていますが、オーボエ奏者にはやる事が沢山あります!練習やリード作りは当たり前ですが、私の場合は所有しているたくさんの楽器たちの世話に膨大な時間がかかります。
まとまった時間がないとなかなか出来ない作業のひとつには「オイル漬け」があります。
「え?楽器をオイルに漬け込むの?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、その通り。楽器をマリネのように漬け込むのです。特に古い楽器を扱う奏者にとっては当たり前の仕事です。
オーボエは木材で出来ているので、乾燥と湿潤を繰り返すと次第にもともとあった油分が抜けてパサパサになって行き、その結果音質のみならず内径の変化にも繋がったり、ワレの原因となったり、楽器にとっては致命傷となってしまいます。
新しい楽器はもちろんの事、100年200年前のオリジナル楽器も長い間演奏されていないので、必ずオイル漬けしなくてはいけません。
オイルはおおまかに「乾性油」と「不乾性油」という2種類に分類する事ができますが、要は空気に触れて固まるか固まらないかという事で、次のようなオイルがあります。
- 「乾性油」:亜麻仁油、桐油、エゴマ油、向日葵油など
- 「不乾性油」:オリーブ油、アーモンド油、ピーナッツ油、椿油、菜種油など
木にオイルを染み込ませて、密度や耐水性を上げる事が目的なので、どちらの種類のオイルでも構わないのですが、「不乾性油」の場合は割と早い段階でせっかく入れたオイルが抜けてしまうので、またすぐにオイル漬けしなくてはなりません。一方「乾性油」を使うとかなり長い間オイルが木の中に留まってくれるので、一度染み込ませてしまえばあまり変化する事がないのが利点です。ただし、時間が経てば固まってしまうので、染み込みきれなかったオイルをしっかりと拭き取ってあげないとベトベトしたり、内径を変えてしまう事になり兼ねませんので、注意が必要です。
人によっては「不乾性油」は固くなりすぎるので使わないという方もいますが、私はその両方を使います。(基本的には亜麻仁油を使い、例えばツアー先などしっかり乾かす時間がない時などはアーモンド油を使います)
ちなみに私がオススメするオイルは…
この「煮亜麻仁油」です。その名の通り、亜麻仁油が煮られたものなのですが、亜麻仁油は一度熱を帯びると乾燥しやすくなる特性があり、少しでも早く作業を終わらせたい時には最適なのです。また、亜麻仁油は発火する恐れのあるオイルで、自分で煮てこのオイルを作ることはとても危険。そこで、すでにボイルされたこの製品はとてもありがたいのです。さらにこの製品の容器は、押すと出てくる、最近よく見かける醤油の容器のような構造になっていて、空気に触れず、酸化しにくいところも素晴らしいポイントです!
キイなどをすべて取り、アルコールでトーンホールや細かいところを綺麗に掃除した後に…
このようにジップロックの中に楽器を入れて、オイルをドバドバと入れ、一晩ほど漬け込みます。(少し見づらいですが…)
その後表面はもちろん、トーンホールや内部などのオイルを丁寧に拭き取り…
こうやって数日間乾かして、綺麗に磨いたキイを付けたら完了です!
特にモダンオーボエなどでこの作業をやろうとすると、キイの数もとても多く複雑ですし、バランスも崩れますのでなかなか出来ませんが、せめて時々内部に羽根などにつけたオイルを塗ってあげるだけで、ワレの防止にもなりますし、音質も変わりますよ。オススメです!
Lesson
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