オーボエ・ダモーレ

今日は珍しく、ちょっと専門的な話題をブログに書こうと思います!

みなさん、オーボエ・ダモーレという楽器はご存知ですか?普通のオーボエよりもちょっと大きく、イングリッシュホルンよりも小さい、オーボエがソプラノ、イングリッシュホルンがテノールと考えると、アルトに位置する楽器です。
この楽器の名前、オーボエ・ダモーレというのは「愛のオーボエ」という意味で、ベルも洋梨のように丸くなっており、その名に相応しく甘く優しい音がする楽器です。そんなオーボエ・ダモーレはバロック時代(おそらく1713年から1717年の間)にドイツで出現した楽器で、あのJ.S.バッハがこの楽器のために数々の曲を残したことで有名になった楽器です。
その他にこの楽器のために書かれた有名な曲と言うと、ラヴェルの「ボレロ」やR.シュトラウスの「家庭交響曲」などが挙げられますが、1750年頃にバロック時代が終わり、古典の時代に移った以降、近代の時代に入るまでオーボエ・ダモーレのために書かれた曲はほとんどありません。つまりバロック時代が終わると同時に一度絶滅したと言ってもいい楽器なのです。ではそんなオーボエ・ダモーレはいつ、どのようなきっかけで復活したのか、このテーマについてずっと気になっていました。

そもそも現代広く吹かれているオーボエは19世紀から20世紀にかけてフランスで開発されたシステムのオーボエで、ドイツで発達した楽器は現在「ウィンナオーボエ」として基本的にウィーンのみで吹かれています。そのフレンチオーボエ(フランス式)とウィンナオーボエ(ドイツ式)の違いはキイのシステムや内径・楽器の長さなどにありますが、簡単に言えばフレンチオーボエは内径が細く、それに伴い線の細いキャラクター。そしてウィンナオーボエは内径が太く、野太いキャラクターというところにあります。

バロック時代のオーボエ・ダモーレはドイツのみで活躍していた楽器ですが、現在知られているオーボエ・ダモーレはフランス式の楽器で、バロック時代のそれとはキャラクターが異なるのではないか?とずっと考えていました。そんなところに、私の元へやってきたこの楽器。

ある方に「おそらくダモーレと同じA管だから〜。とりあえず研究しといて〜。」と言って渡された古いオリジナルの楽器なのですが、見た目は私の知っているオーボエ・ダモーレよりも大きく、ボーカルがケースの中に入っていましたが、私の常識内で考えられるサイズのリードをつけても、どうしても音程が低く「これは何者だ?」と思っていた楽器でした。
メーカーはBerthold, Georg, & SohneでドイツのSpeyer-am-Rheinで作られた楽器です。調べてみると1849-1892にあった会社なので、それくらいに作られた楽器なのは確かですが、どんな曲を演奏するために作られた楽器なのか、さっぱりわかりませんでした。

そんな時に、ふと思いつきでボーカルをつけずに楽器にそのままウィンナオーボエのリードを挿して吹いてみたところ・・・

なんとA=±442で全ての音が正しく鳴るではありませんか!!!そして最初に言われた通り、オーボエ・ダモーレと同じようにA管ということもわかりました!

では、何のために作られた楽器なのか…。その時代にオーボエ・ダモーレのために作られた曲は知らないし…と思いましたが、大切なことを忘れていました。あのメンデルスゾーンが数々のバッハの作品を再演しているではありませんか!1829年に再演されたマタイ受難曲ではオーボエ・ダモーレは使われていませんが、きっとそれ以降の研究によって、今私の手元にあるような楽器が作られたのではないかと考えるとワクワクします。この楽器は現代のフランス式のオーボエ・ダモーレとは違い、もっと野太いドイツの音がします。メンデルスゾーンは1847年には亡くなっているので、この楽器の響きを聴くことはありませんでしたが、彼らの思いや血が通っている楽器なのですね!

Lesson

オーボエ奏者 荒井豪 レッスン
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