講習会レポートの3回目は「音楽と言葉」について。今回はかなり専門的ですので私の自己満足とさせてください。

以前にも書いたように今回の講習会、色々な国からの参加者がいた。その中でフランス人に注目したい。というのも私は講習会の中であるフランス人と一緒に演奏する機会があった。その曲目もフランスバロック音楽の代表、F.Couperinのトリオ。ヴァイオリン、オーボエ、ヴィオラ・ダ・ガンバ、チェンバロという編成だ。彼はヴァイオリン奏者で、18歳の男の子。私が休憩所で休んでいた時に彼から「一緒にクープランを演奏しよう」と言い出してきた。私はもちろん同意した。というのもドイツではあまりにフランス音楽を演奏する機会が少なすぎる。講習会最後の演奏会でもフランス音楽を演奏したのは私たちのグループだけ。あとはドイツかイタリアの音楽である。
早速次の日に練習を始める。私は正直に言って、彼のヴァイオリンが好きではない。ボウイングはめちゃくちゃだし、非音楽的に体を揺らす。音程も決して良くはない。そんな彼が私にとてもたくさんの要求をしてくる。「ここは一拍目をもっと強調しなきゃ」「楽譜に書いてあるフランス語の意味はこんなニュアンス」・・・。私は「でもそれをやりすぎては不自然だ」「ここはもう少しイネガル奏法で弾くべき」などと言い返した。イネガル奏法とはフランス語でnotes inégales と書き、「不均等に演奏する」という意味。フランスバロックでは良く使う奏法である。彼の弾き方はダウンとアップの繰り返しで、とてもフランス音楽の趣味に合わないように聞こえた。私自身、フランス音楽はとても好きだし、苦手な方ではないと思っていた。そんな彼に何度もダメ出しをくらう。

練習の時私は正直彼の言っていることが理解できなかった。それがある時少し分かる瞬間がきた。
それは彼にフランス語を教えてもらった時。彼の真似をしてフランス語を発音してみる。すると彼は笑う。私が正確に発音できないからである。発音できない理由は日本語にない発音がありすぎるから。私は正確に真似しているつもりでもネイティブには全く違って聞こえている。これは音楽でも同じではないか!!

私がフランスの趣味だと思って演奏している音楽が、ネイティブの彼にとっては全く違うもの。彼自身はまだヴァイオリンは上手く弾けないけれど、彼の頭の中にはフランスのニュアンスが入っている。だから何度も私に指摘していたのである。私はショックだった。

私は日本人。しかし私の勉強しているのは西洋音楽。いくら勉強してもネイティブにはなれないが、西洋人に認められる音楽をする日本人はたくさんいる。私は自覚した。特に日本語にない発音をする国の音楽について、もっと慎重にならなければならないと。

とてもいい経験だった。