皆さんは「ナンバ」という言葉を聞いたことがありますか?

ナンバとは日本古来からある体の動かし方や思想の事で、私が通っていた桐朋学園大学で体育の指導をしている矢野龍彦先生が研究し、オリンピックメダリストである末續慎吾(ハードル)が採用したことで一躍有名になった。矢野先生によると先生が桐朋に就任し、「音楽家に必要な体育の授業」ということを考えた結果「ナンバ」に行き着いたそうだ。私は大学時代このナンバに出会って、楽器を演奏する上での体の使い方がガラリと変わって一気に上達への道が見えた。

江戸時代の日本では皆、着物を着て下駄や草履を履いて生活していた。農民は一日中農作業をして、武士は素早く力強く動き、飛脚のような職業もあった。そのような格好で生活する上で着物が着崩れない、鼻緒が切れないような動き方が自然と身についていた。現代の日本では着物が洋服に変わり、下駄がスニーカーに変わった。特別動きに気を付けなくても生活に困ることはない。だんだんと動きについて関心が薄くなってきた。つまり自分の体と「対話」することが無くなってきたのだ。その結果、日本人は疲れやすくなった。一日農作業などしたら腰を壊す人だらけだろう。ナンバとは何が「快」で何が「不快」なのか、体と対話することである。例えば人間は熱いものを触ればすぐに手を引っ込めるし、苦しくなったら息を吸う。そのまま熱いものを触り続けたらやけどをする。これは動物に備わった機能である。これを大切にするのがナンバ。ピアニストが腱鞘炎になるのは、練習のし過ぎなどではなくて「間違った体の使い方の継続」の他ならない。体のサインに敏感にならなくては人間は怪我をする。オーボエの演奏においても、一番楽な姿勢(演奏し続けても疲れない姿勢)で練習しなければ、すべてが無駄になってしまうのだ。

ナンバは音楽やスポーツのみならず私たちの生活のすべてに取り入れる事ができる。できる限りの力みを抜いてウォーキングすると、とても晴れ晴れしい気持ちになる。うつ病などあり得ない。ぜひ皆さんも普段から「体と対話」して生活してみてください。とても楽しいですよ!

ナンバに興味がある方は矢野先生が所長を務める「心身技術研究所」のHPをのぞいてみてください。http://nanba-walk.com/nanba